ダマスカス。
 
 
 
■ タペットの話を書こうと思っていた。
 ドイツ系の車は、オイル・タペットが多くて、暖まるまでの間、ガチャガチャ煩い。軽油を入れられそうになったこともある。
 浜松町の近くのフロントに聞くと、煙が出なければ放っておいても良いとのこと。直すとベラボウなんですよ。
 なんだか投げやりで、次第に気分が出てきた。
 
 
 
■ ロレンスが乗っていた単車は、ブラフ・シューペリアといった。
 四気筒で、当時1000ccの排気量があった。
 この辺、うろ覚えなので申し訳ないのだが、要は単車の中のロールスかベントレーといったところである。
 決してディムラーではない。
 映画の中では、最初と最後に単車のシーンが出てくる。
 任務を終え、英国に帰る彼を乗せたロールスを、軍用の単車が追い抜いてゆく。砂煙。顔のアップ。
 彼は何故退役後、単車に跨るようになったのか。
 出身と、栄光、挫折。そこに男色の気配が加わり、ダマスカスへの道が霞んでいるように思える。